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運命の人(3)(4)/山崎豊子

全4巻からなる「運命の人」ですが、読み始めてから(「運命の人(1)(2)」)読み終えるまでかなり時間がかかってしまいました。

他の本を読む合間に読んでいた、というのが大きな理由ですが、筆者が伝えようとする太平洋戦争の重さに耐えかねてページをめくる手が止まってしまった、ということも影響しているかもしれません。

太平洋戦争というのは日本とアメリカの戦争ですが、その矢面に立たされたのは、首都である東京から遠く離れた沖縄でした。

運命の人〈3〉 (文春文庫)運命の人〈3〉 (文春文庫)
(2011/01)
山崎 豊子

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運命の人(四) (文春文庫)運命の人(四) (文春文庫)
(2011/02/10)
山崎 豊子

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沖縄返還にあたって、日本政府とアメリカが交わした密約をスクープした新聞記者 弓成ですが、そのニュースソースが男女関係にあった外務省事務官であったため、裁判で有罪となり、新聞記者を辞めざるを得なくなります。

その後、妻子のもとを離れ、実家の青果卸売業を継ぐべく九州に戻りますが、父亡き後にその青果業は左前となり、廃業することになります。

その後、縁あって沖縄に暮らすこととなった弓成は、返還後も続く、目を覆いたくなるような沖縄の現状にやるせない思いを抱き…。


筆者はおそらく、本書において戦後の沖縄の現状を伝えたかったのだと思いますが、戦争を知らない世代であるワタシにはあまりにも重いものでした。

ワタシが初めて飛行機に乗って旅した地が沖縄だったのですが、そのとき抱いた印象が「ここは日本じゃない」でした。

米軍基地を横目で見ながら走る道はどうしても日本とは思えず、その基地の合間にある商店の看板が英語だったことも、若かりし頃のワタシには衝撃的でした。

その後、ハワイに行った際に「(沖縄に比べて)こっちのほうがよっぽど日本だな」と思ったぐらいですから。

ノンフィクションによって伝えられる歴史がある一方で、フィクションで伝えられる歴史というものも無視できないのではないでしょうか。


実は、ワタシが本書を読みあぐねた理由のひとつに、主人公である弓成がどうも好きになれなかったというのがあります。

同じ筆者の「不毛地帯」については、主人公の壱岐に対して男性的な魅力を感じたこともあり、ぐいぐい読み進められましたが、本書の弓成はワタシにはダメでした。

新聞記者としては有能で、家庭を顧みず仕事に打ち込む姿は良しとしても、記者退職後、自分の失脚だけにとらわれて妻子を顧みることが出来なかった姿に、ワタシは幻滅してしまいました。

この弓成がものすごぉくオトコマエだったとしても、ワタシは結婚したくありませんが、ご主人がオトコマエという結婚生活はどんな感じなんだろな?と思ったりすることはあります。

ご近所にご主人がものすごぉくオトコマエの方がおられるのですが、先日「ダンナさんがオトコマエってどんな感じ?」と聞いてみたら、下記↓のような答えが返ってきました。

「(主人をオトコマエだと)思ったこともないし、そんなことより気難しくて、機嫌が悪いと口をきかないというのが、とっても疲れる」というものでした。

ワタシにとっては羨望の的であっても、一長一短があるんだな、と思いましたが、それでも、やはりオトコマエのダンナ様というものに憧れますね。

いわゆる「ないものねだり」というものでしょうか…?


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虚夢/薬丸岳

今からちょうど10年前に起きた、大阪教育大学付属池田小学校事件を覚えておられますか。

刃物を持った犯人が小学校に侵入し、8名もの小学生を殺害した事件です。

本書は、冒頭にこの事件を彷彿とさせるシーンが登場します。

しかし、犯人が死刑となった池田小事件とは違い、こちらの犯人は心神喪失を理由に不起訴となるのです。

虚夢虚夢
(2008/05/23)
薬丸 岳

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佐和子が3歳の娘 留美を公園で遊ばせていると、そこへ突然刃物を手にした若い男性がやってきて、公園にいた人たちに次々襲いかかります。

佐和子も留美もその凶行の的になり、佐和子は一命をとりとめたものの、留美は亡くなります。

犯人の藤崎は12人もの人の命を奪ったにも関わらず、精神鑑定で統合失調症と診断され、刑法39条の「心神喪失者を罰しない」との法律により、不起訴となります。

この事件が原因で、佐和子と夫の三上は離婚するのですが、事件から4年が過ぎて再婚した佐和子から三上に連絡が入ります。

街で藤崎を見かけた、と。



文章に無駄なところが見られず、また登場人物の設定にも無理がないので、読みやすくて一気にいってしまいました。

筆者は刑法39条でぐいぐい押してくるのかと思いきや、そうではなく、登場人物をきちんと描いていて、結末への展開も丁寧でした。

ちょっとエラそうな言い方になりますが、模範的な文章だなと思いました。ワタシは好きですね。


精神を病んだ犯人藤崎が逃げまどう人々に刃物を持って襲いかかるシーンから始まるのですが、実は精神を病んでいるのは藤崎だけではなく、最後にもう1人現れます。

意外な人物なので、ここでは書きませんが。


「死んだ子の年を数える」という言い回しがありますが、あれほどつらいものはないな、と思います。

その言い回しどおり、佐和子の心の中から留美が消えることはなく、なんとも痛々しいです。

かわいい盛りの3歳で亡くなった留美とは違い、かわいげのかけらも無い我が息子ですが、それでも、死んだ子の年は数えたくありません。

ついでにいえば、「1人残される」というがイヤなので、ワタシは死んだオットの年も数えたくないのです。

オットより6歳下のワタシですが、何の根拠もなくワタシのほうが先に死ぬと決めているので、1人残される、何もできないオットが困らないよう、先日カレーの作り方を教えてあげました(といっても、ルーの箱の裏を読めば誰にでもつくれますが)。

しかし、妻に先立たれた独居老人がカレーを食べている姿というのは、侘びしく感じないこともないのですが…。


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運命の人(1)(2)/山崎豊子

全4巻からなる山崎豊子の新刊「運命の人」ですが、ワタシは今まだ2巻目を読み終えたばかりです。

でも、ここまででも十分おもしろいです。

運命の人(一) (文春文庫)運命の人(一) (文春文庫)
(2010/12/03)
山崎 豊子

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運命の人(二) (文春文庫)運命の人(二) (文春文庫)
(2010/12/03)
山崎 豊子

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沖縄返還にまつわる日本とアメリカのやりとりと、そのスクープを狙う新聞記者が描かれているのですが、筆者の筆はそれだけにとどまりません。

国益に関わるほどの外交上の機密と、互いに家庭を持つ男女の不倫が同じページの上に描かれていることに、違和感を微塵も感じさせないのです。

実話を基にした小説らしいのですが、まさに「事実は小説より奇なり」とはこのことだなと思いました。

今ちょうど折り返し地点ですが、この先の展開が楽しみです…。


ところで、主人公 弓成と男女関係に陥り、外交上の機密を漏らしたとされる外務省事務官 三木昭子は38歳なのですが、彼女の夫が彼女について「更年期のせいか、イライラすることが多かった」と陳述している場面があるのです。

これを読んで、ワタシはひっくり返りそうになりました。

今から約40年ほど前の話とはいえ、38歳が更年期ならワタシなんて初老(ホントの年齢は言えませんが)になってしまうのではないでしょうか?

現在の38歳と言えば、出産する人も少なくありません。

かく言うワタシも、隙あらば今からでも出産してみようかな、と思っているぐらいですから。

ただ、残念ながら、こればかりはワタシ1人では出来ないことなので…。


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フリン/椰月美智子


なんだか過激なタイトルですが、内容はそ


こまで過激ではなかったですね。


不倫をテーマにした短編からなるのですが、


プラトニックなものからちょっとどろっとする


ものまで多種多様にわたる不倫が登場しま


す。


本のはなし ホンの少し


その中で、「年下の男の子」は、中学生になっ


た息子の成長がうれしくもあり寂しくもある母


が、息子の友だちに一瞬恋心を抱いたことか


ら、妻として女としてもう一度自分に磨きをか


けようと決心する、コミカルでちょっとかわい


いお話です。


その対極をいくのが、「シニガミ」で、高校時代

に交際していた男女が、偶然マンションの隣


同士に暮らすことになり、お互い配偶者も子ど


ももいる身ながら、よりを戻した関係をずるず


ると続けていた結果、残酷な結末が待ってい


ました・・・。





「年下の男の子」の主人公であるお母さんの


気持ち、よくわかります。


子どもの成長を寂しく思うのは、心にゆとりが


できるからでしょうね。


子どもが幼い頃は、母というのは常に緊張を強


いられていますから。


食事中は「お茶わんひっくり返し攻撃」をされな


いように完璧な防衛をこころがけ、入浴中は「泣


きわめき攻撃」をされる前に迅速に行動し、就寝


時は「いつまでも起きてるぞ作戦」を阻止するべ


く対策をねらなくてはいけないのですから。


しかし、普通にお茶わんとお箸を持って食事をす


るようになり、お風呂は10数えるまでつかってい


られるようになり、おやすみと言ってお布団に入


るようになると、母としては、珍獣だった頃が懐かし


くもあるのです。


低い声で、「お母さん、こんなところで寝ていたら、


風邪ひくよ」などと言われると、うれしい半面、つま


んなく思ってしまうのが、母というものなのではない


でしょうか。



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さぶ/山本周五郎


山本周五郎の時代もの「さぶ」は、主人公 栄


二の親友の名前がタイトルになっています。


栄二は繰り返し「男前」と書かれていますが、


それがなくても、しぐさや話し言葉の端々に


「男前」であることがにじみ出ています。


高校生の頃読んだときには、「栄二って、かっ


こいー!(その頃はイケメンという言葉はあり


ませんでした)」と思った記憶があります。


本のはなし ホンの少し


表具店で住み込みで職人修行をしているさぶ


と栄二は同い年で、お互い励まし、支え合う仲


です。


しかし、性質は正反対で、栄二は姿形だけでな


く仕事の腕も優れており、対して、さぶはずんぐ


りした身体つきで、真面目ですが要領が悪く、仕


事の腕もなかなか上がらないのでした。



そんなある日、2人が働く表具店の得意先で栄二


が盗みを働いたとの疑惑が持ち上がります。


栄二は無実であることを訴えますが、そのことがか


えって裏目に出て、栄二は石川島の人足寄場に送


られてしまいます。



世をすねて、自分を無実の罪に陥れた人々への復


讐だけを考えて、人足寄場の誰にも心を開こうとしな


かった栄二ですが、ここにいる人たちが自分以上に


つらい目にあってきて、それでもなお、助けの手を差


し伸べてくれる姿に心を動かされ、みんなのために


心を砕くようになり、みんなから一目置かれるように


なります。



そして、気持ちを通い合わせた「おすえ」とさぶの支


えにも閉じたままだった心も次第に開き、2人の尽力


でようやく栄二は放免されます。






ウン十年ぶりに読みましたが、やっぱり栄二は男前


ですねー。


最初の、かみそりのように触れると切れそうな男前も


いいですが、苦労した後の男気のある男前も、これま


たよかったです。



この物語の根底には「人はひとりで生きているわけでは


ない」という人生訓が流れていて、登場人物たちが、彼ら


自身の言葉でそれを語ってくれます。


その中で、興味深く思ったのが、栄二が彼に思いを寄せ


る女性から言われた言葉です(↓)。


「世間にたてられ、うやまわれていく者には、陰にみな


さぶような人間 (何も言わず支えてくれる人) がついて


いる」。



うーん、確かにそうですね。


ワタシが今まで見た偉い人には必ずといっていいほど、


こういう人がいましたね。


「懐刀」とか「右腕」とか「片腕」と呼ばれる人ですね。


偉くなる人にそうなるだけの力量が必要なように、偉く


なる人を支えるのにも力量が要るように思います。




所帯を持った栄二とおすえは、おすえのある告白により、


より絆を深めるのですが、その場面で、「唇 (口) を吸う」


という表現が出てきます。


これは時代もの特有の表現で、よく出てくる (特に最近の


作品には) のですが、ワタシは「キス」よりも色っぽい感じ


がして好きですね。



どうでもいいことですが・・・。





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