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夜の橋/藤沢周平

ワタシにとっての時代劇の醍醐味といえば、ままならぬ人生を黙って受け入れる登場人物の切ない姿でしょうか。

短編集である本書にも、そのような人々が登場します。

その中の『暗い鏡』のおきみの切なさが、最も胸にしみました。

夜の橋夜の橋
(2006/08/25)
藤沢 周平

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鏡砥ぎ師の政五郎は、一人前になった息子と職人たちに主な仕事はまかせて、半分隠居のような生活を送っていました。

そんなときに、姪のおきみが殺害されたとの連絡が入ります。

弟夫婦が亡くなったあと、政五郎はしばらくその娘であるおきみを預かっていましたが、程なく彼女は米屋に奉公に出たはずでした。

しかし、死体として発見されたおきみは、春をひさぐ生活を送っていました…。




ひとり暮らしをしたことがないワタシは、寂しいという感情にあまり左右されることなく今日まで来ましたが、実は人は寂しさにとても弱いものなのかもしれません。

おきみはろくでもない男に騙され、身を持ち崩していきますが、そうなっていったのは寂しさのためだと思います。

誰かに頼りたい、心を許す相手が欲しいと望むのは、人は誰しも、若い女性であればなおさらのこと、当然のことだといえるのではないでしょうか。

おきみの姿が切ないです。



本書には、男としての見栄えは良いけれど、生活者としての能力を備えていない男性が何人か登場し、そういう男性に惹かれてしまう女性たちが描かれています。

確かにわからないことはないですね。

若い頃は見た目が大事ですから。

けれど、人生経験をそこそこ積むと分かると思います。

きれいなラッピングペーパーで包まれたゴミより、新聞紙にくるまれたダイアモンドのほうが価値があるということに。

ただ、ダイアモンドを包む新聞紙は、しわが無いよう、ピシッとしていただきたいのですが…。


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橋ものがたり/藤沢周平

江戸の町は水路が発達していたため、橋が多く、江戸を舞台にした小説と橋は切っても切れない関係にあるのではないでしょうか。

本書はその名のとおり、橋にまつわる短編が10編収められています。

どれもこれも、切ない話だったり、心が温かくなる話だったり、と秀作揃いです。

橋ものがたり  新装版橋ものがたり 新装版
(2007/02/16)
藤沢 周平

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その中の『こぬか雨』は、早くに両親を亡くし、叔父の履物問屋の出店を1人で店番しながら暮らす「おすみ」が、結婚を控えているにも関わらず、何者かに追われている若い男性を数日かくまう、という物語です。

おすみは、結婚相手の勝蔵の外見も内面も野卑なところが好きにはなれないのですが、世の中に大きな望みを持っていないため、運命として受け入れています。

そんなおすみが、人殺しをした新七をかくまい、ほんの束の間心を通わせ、彼女にとっては初恋といっていいような、一生に一度の恋をするのです。

おすみは、新七とのほんの数日の思い出を胸に、好きでもない勝蔵と一生暮らしていくことになると思いますが、彼女は不幸な人なのでしょうか。

他人がどう思うかは別にして、ワタシは彼女自身が自分を不幸だと思うことはないような気がします。

誰もが平等とされている(でも、決してそうではない)現代とは違い、江戸時代は持つ者と持たざる者がきっちり分かれており、人生とは諦めて受け入れるものだったのではないでしょうか。

しかし、諦めるということが必ずしもマイナスイメージというわけではなくて、おすみの言う「世の中に大きな望みを持たない」ということが、幸せになるためのコツであったりするのかもしれません。

いつも不平不満をお腹に抱えているワタシのような人間は、ぜひとも見習わなくていけないな、と思います。

「踏みきりがタイミングよく通り抜けられなかった」「車線変更したら前を走る車が遅かった」「スーパーのレジで絶対こっちのほうが早いと思ったのに隣のほうが早かった」というようなことがあれば、ワタシは自分ほど不幸な人間はいない、と考えるタチなので…。


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前夜のものがたり/藤田宜永


何らかの結果が出る日の前日の夜って、とっ


てもドキドキしますよね?


ワタシにとってのドキドキする前夜といえば、


席替えの前日でした。


本書は、中年男性たちが、恋愛にまつわる


それぞれの出来事に不安と期待を抱き、あれ


これ考えて過ごす前日の夜を描いた短編集


です。


本のはなし ホンの少し


別れた妻に引き取られた娘が風俗嬢になった


と聞いて、父である主人公が確かめに行く「風


俗の前夜」、幼馴染と同じ女性に恋をし、同時


に交際を申し込んだ主人公が、彼女からの返


事を待つ「蘭の前夜」、など、ありそうでなさそう


で、でも、あるかも?と思わせてくれる話が続き


ます。


しかし、「三角関係の前夜」は実際には起こる


はずはないだろうな、と思いましたね。


風俗嬢に恋をした男性は、馴染みになった古


書店の店主とその風俗嬢が夫婦であることを


知ります。


しかし、店主はゲイであるため、2人の間には


性的関係がないのです。


そして、ある夜酔いつぶれた店主が2階で眠る


家で、明日の朝、店主が起きてきたときのこと


を考えながら、主人公とその女性は服を脱ぎ始


めます…。






ここに登場する男性たちは、全員50代ながらも


色恋にまだまだ現役です。


50代ということで、当然ながら倫理的に問題のあ


る恋愛もあるのですが、そのあたりはさらっと描い


てあります。


なかでもちょっとおもしろかったのが、最後の「キャッ


チボールの前夜」で、株取引に夢中の20代の娘と


恋に夢中の50代の父が登場する設定でした。


PCで株取引をする娘と、PCで彼女からのメールを


待つ父がいるのです。


筆者はそういうふうに意図していないのかもしれま


せんが、この設定、なんだかかわいかったです。



でも、実際の50代は、どうなんでしょうね?


少なくともワタシのまわりには、色恋に現役、って


感じの方はあまりおられないような気がするので


すが。


ワタシ個人の意見といたしましては、石田純一みた


いにギラギラしている50代もどうかと思いますが、


かといって、サザエさんちの波平みたいに枯れてし


まったような50代もいかがなものかと…。



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「話の腰」を上手に折る技術/藤田完二


みなさんのまわりにも、話の長い人って、いま


せんか?


ワタシは急いでいるときに、そういう方を見か


けたら、自分の運の悪さを呪い、電柱のかげ


にでも隠れたくなります。


本書は、話が長い人を分析し、そういう人への


対処法が書かれています。


本のはなし ホンの少し


第1章、第2章では、長い話をする人の話のパ


ターンと心理を分析しています。


そして、いよいよ第3章で、お待ちかねのそうい


う人への対処法が登場します。


いくつかあって、ぷっ、と笑えるものもあるので


すが、その中のひとつがこういうものです。


聞き上手の人は、相づちを打つのが上手いです


よね?


絶妙のタイミングで、「そうなの」とか「大変だね」


とか「よかったね」などという、話し手を受け入れ、


肯定する相づちを打ってくれますよね。


これって、話し手側からすると、ものすごい快感


なのではないでしょうか。


なので、話すのを止めさせたければ、この逆のこ


とをすればいいらしいのです。


話し手の言うことを否定し、意見すれば、話し続け


たくなくなるのは間違いないそうです。


確かにそうだとは思いますが、気が強いくせに、結


構弱気なところがあるワタシにはできそうにはない


のですが。




今ワタシが最も避けたい、話の長い方は、ワタシより


かなり年上の方なので、あまり失礼なこともできませ


ん。


ただ、幸いなことに声の大きい方なので、お見かけす


る前にお声を聞くことができるので、わりと高い確率で


避けることができるのです。


それでも、完全に避けることは難しいので、遭遇してし


まうこともあります。


そういう場合は、「もう少しの辛抱…。」と自分に言い聞


かせて、ひたすら時が過ぎるのを待つことにしています。


ただ、急いでいるときは、かなりキツいのですが…。



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マリー・アントワネットの生涯/藤本ひとみ


マリー・アントワネットといえば、世界史が苦手


な方でもご存知の方が多いのではないでしょ


うか。


かくいうワタシもそうです。


王妃でありながら断頭台に立つという、衝撃的


な死もさることながら、残されたエピソードも


バラエティに富んでおり、もし現代に生まれて


いたら、スキャンダル女優の名を欲しいままに


していたのではないでしょうか。


本のはなし ホンの少し


本書では、そんな彼女の人生が、史実に基づ


いて明らかにされていきます。


名門ハプスブルク家に生まれたマリー・アント


ワネットは、オーストリアとフランスとの関係を


強固にするため、フランス王太子(後のルイ


16世)と政略結婚します。


その後王妃となった彼女は、国民のために使う


べき血税を、自らの享楽のために浪費し、その


結果、フランス革命を引き起こすのです。




歴史家の発言と文献の引用によって詳らかに


される彼女の姿は、悪人というより、人間的に


未熟者であったようです。


筆者も繰り返しそう述べています。


筆者は女性ならではの目線で、彼女を皮肉っ


ていて、ヨーロッパ中世史が全くわからない人


でも、難なく読めると思います。



アントワネットは、パンが無いという国民に、「パン


がなければケーキを食べればいい」と言ったと


されていますが、真実の程はよくわからないな


がらも、本書を読む限りでは、彼女ならそう発言


してもおかしくないような気がします。



しかし、こういう人、確かにいますよね?


「我が家は狭くて…」みたいな話をすると、「じゃ


あ、広い家を買えば?」と平然と言い放つような


人です。


若い頃は、こんな人にはなりたくなあと思って


いましたが、酸いも甘いも噛み分けたつもりに


なってきた年代になると、いやいや、こんなふ


うになったほうが自分自身の精神衛生上はい


いのでは?という気がしてきました。


このような人は悪気はないのです。


ただ、頭に浮かんだままのことを口にしている


だけなので、発言するまでの迷いは一切ありま


せん。


それに対して、一応気遣いらしきことをする人


は、発言するまでに、こんなことを言ったりし


たら相手が気を悪くしないか、とか、自分自身


の人格を疑われたりしないか、とか考えてしま


います。



しかし、忍耐や根気というようなものが減ってく


るお年頃になると、相手を思いやるということが


しんどくなりつつあります。


そうすると、ストレートな発言のほうが自分に


とってラクなのではないでしょうか。


けれど、気遣い発言を長年してきた人は、そう


簡単には頭に浮かんだままのことを口にする


なんてこと、そうそう出来ることではありません。


もし、出来たとしても、友人の数を著しく減らす


ことになるのは間違いありません…。




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