FC2ブログ

木もれ陽の街で/諸田玲子

3か月もお休みしてしまいました。申し訳ありません。

とはいっても、本を読んでいなかったわけではなく、ブログを書く余裕が無かっただけなのですが。

今回3か月ぶりにパソコンに向かう気になったのは、本書のおもしろさをみなさまにお伝えしたくて。

全く期待することなく手に取った本だったはずなのに、ワタシをぐいぐい引っ張ってくれました。

木もれ陽の街で木もれ陽の街で
(2006/04)
諸田 玲子

商品詳細を見る


太平洋戦争の傷がようやく癒え始めた、戦後の東京の住宅街が舞台となっています。

主人公の公子は、会社員の父と専業主婦の母、そして妹、弟たちと東京荻窪に暮らす、結婚適齢期の女性です。

父の勧めもあり、公子は女学校卒業後、看護学校に学び、丸の内の大手企業に看護師として勤務しています。

幼馴染の祥子が代議士の息子との婚約が整ったり、叔母から縁談を持ちこまれたりしながらも、まだ結婚というものを身近に感じられなかった公子でしたが、恩師の家での集まりの折に、恩師の甥で、売れない画家の片岡に出会ったことで、戸惑いながらも彼にひかれていきます…。




筆者の諸田玲子さんは主に時代劇を執筆されていて、ワタシの好きな作家のひとりです。

ですが、今から60年近く前のこととはいえ、時代劇とは呼べない作品なので、あまり期待はできないかも、と思いながらもページをめくりましたが、いえいえ、おもしろかったのです。

本書に一貫して流れているのは、古き良き時代の中流家庭の空気です。

威厳を持ちながらも理解のある父、夫を立て常に家族のために尽力している穏やかな母、そして仲の良いきょうだいたち。

まさに、理想とする家庭が描かれているのです。

しかし、公子はそんな家庭にそぐわない、危険な香りのする男性 片岡に心惹かれてしまいます。

男女が肩を並べて歩くことさえはばかれる時代に…。




本書は、恋愛小説にカテゴリーされるものではなく、市井に暮らす人々の姿が淡々と描かれていて、それに公子の恋愛が色を添えているだけのように読めました。

恋愛というのは、ドラマや小説の世界では大きな位置を占めていますが、現実には恋愛のことしか考えていない人などほとんどいないのではないでしょうか。

胸の内には熱い想いを秘めていても、日々の生活の中ではそんなことなどまるで無いようにふるまっているのが普通の人なのだと思います。

だからこそ、平凡な日常を送りながらも、御し難い恋心を持てあましている公子の姿が切なく感じられるのです。

しかし、結末はあまりにも意外なものでした。

丁寧に日常を送る公子の姿とは、あまりにもかけ離れたものでした。

しかし、恋愛でつらい結果を迎えたとしても、人は当たり前の日常を送っていかなければならないのです。

人生とは、ホントにつらいです。




さてさて、本書には公子一家の近所に住む高畠夫人という、名わき役といってもいいような人物が登場しています。

常にご近所の動向を把握し、知り得た情報はすかさず他の人に伝えるという、味方にすると心強いけれど、敵に回すとコワいかも、という方なのです。

このような方って、いつの時代でもどこにでもいますよね?

実際に、私の周囲にもおられます。

このような方にうまく立ち回るには、もたらして下さる情報はありがたく享受し、自分自身のことは全く話さない、ということでしょうか。

しかし、簡単そうに見えて、意外と難しいのです、これが。

なぜなら、このような方は誘導尋問がお上手なのです。

しまった!と思ったときには、もう遅いのです…。


おもしろいと思って下さった方クリックお願いします。ランキングに参加しています。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

スポンサーサイト

楠の実が熟すまで/諸田玲子

永遠に続くのではないかと思われた「水戸黄門」の放映が終わり、テレビにおける時代劇の衰退が一気に進んだのではないでしょうか。

時代劇が華やかなりし頃は、タイトルに「隠密」なる言葉が入る時代劇も少なくなかったように思います。

本書は、幕命を受けて、隠密として敵方に妻となって乗り込んだ女性が主人公です。


楠の実が熟すまで楠の実が熟すまで
(2009/07/29)
諸田 玲子

商品詳細を見る


江戸時代も中期になり、武士の社会が安定してきた頃、幕府は京の公家たちからの多額の金銭の要求に頭を悩ませていました。

武士社会に反感を抱く公家たちが、金銭的な不足分は幕府が補填するというしくみを悪用して、幕府から金を引き出すために、贅沢な振る舞いをしているとの情報があり、幕府は捜査を開始します。

しかし、京に送り込まれた武士たちの必死の捜査も空しく、公家たちの悪事のしっぽをつかむことが出来なかったため、その武士の中のひとりである中井清大夫の姪 利津が公家の高屋康昆と結婚して、内情を探ることになります。

失敗すれば命さえも失ってしまう程の重責に利津は躊躇しながらも、役目と割り切って婚家に乗り込みますが、予想に反して康昆は人間的な温かさを持った、尊敬するに値する人物であり、先妻の子である6歳の千代丸も利津に懐き、彼女も千代丸に愛情を抱きます。

予想外のことに、隠密の仕事に迷いを覚える利津でしたが、捜査の期限である「楠の実が熟す」頃が刻々と近づいてきて・・・。




利津が乗り込んだ後、高屋家では次々と事件が起こり、また幽閉されている康昆の弟の右近の存在も謎に包まれていて、最後まで事の真相がわからず、気が抜けませんでした。

利津が康昆や舅の留守の間に家の中を探っている場面では、気の小さいワタシは、見つかったらどうしよう…?とハラハラドキドキしてしまいました。

しかし、彼女が父に送る手紙には感服しました。

万が一、敵に見られたときのことを考えて、事実をありのままに書くのではなく、知り得た情報を暗号のように散りばめながらも、日々の出来事を綴ったようにしか見えない手紙は、本書の中で重要な位置を占めているのではないでしょうか。



ところで、今年のNHK大河ドラマは「平清盛」ですね。

これは、貴族社会から武家社会への転換期にあたる時期を描いていますが、ここでは、武士は貴族に見下される存在となっています(あまり見ていないので、憶測も少し入っているかもしれませんが)。

しかし、本書の舞台となった時代には武士と貴族(公家)の立場が完全に入れ替わっており、武士が公家たちを管理下に置こうとしているのです。

傍若無人な振る舞いをする公家たちに、武士たちが怒りを覚えるの当然ですが、公家にとっては、見下していたはずの者に大きな顔をされるのが腹立たしくてたまらないというのもわからなくはありません。

ただ、武士社会になってから久しいのに、貴族社会の栄華を忘れることが出来ず、しつこく武士に敵対心を持ち続けるのもどうか・・・、という気がしないでもないのですが。

いうなれば、「モーニング娘」が「AKB48」に嫉妬して、イジワルするようなものでしょうか…?


おもしろいと思って下さった方クリックお願いします。ランキングに参加しています。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

狐狸の恋/諸田玲子


大老といえば井伊直弼、老中といえば水野忠


邦ですね(でもないか…)。


天保の改革で知られる老中水野ですが、本


書に登場するのは失脚してからです。


本書は、身分が低いながらも、幕府の重要な


任務を受け持つ武士「お鳥見役」の一家を主


人公にした短編集なのですが、その中で唯一


登場する実在した人物が水野なのです。


登場する場面は一か所だけなのですが、執


政者としての孤独と苦悩をにじませています。


本のはなし ホンの少し


本書は表題作を含む短編8編からなりますが、


その中の「末黒の薄」は悲しい別れの物語です。


親の決めた縁談を嫌い、思いを寄せ合う浪人


者と駆け落ちをした武士の娘は、貧しいながら


も幸せに暮らしていました。


しかし、ある日突然浪人である夫が姿をくらま


し、乳飲み子を抱えた妻である武士の娘は、我


が子の行く末を悲観して、主人公一家の家の前


に我が子を置き去りにするのですが…。







数年前、イラクで外務省職員が何者かに襲撃さ


れ殺害されるという事件がありましたね。


その職員の方はまだ若くて、遺体引き取りにイラ


クに向かう奥さまと手をつなぐお子さんはまだ小


さく、そのうえ奥さまは身重でした。


ニュースで繰り返し映し出されるその姿を見るた


びに、胸がつまったのを覚えています。


ご主人もお子さんたちの成長を見たかったでしょ


うし、奥さまもご主人とともにお子さんたちの成長


を見守りたかっただろうと思います。



「末黒の薄」も、夫婦は止むを得ない事情で別れ


ることとなるのですが、子どもの成長を見ることが


できない夫も、夫とともに子の成長を見守ること


ができない妻も、そのつらい胸の内を口にできな


いまま、別々の道を進み出すのです。



親にとって子どもの成長とは、実感する幸せだけ


でなく、その幸せを語り合う喜びというのもあるの


ではないでしょうか。



我がオットも、ワタシとの会話(といっても8割強ワ


タシがしゃべっているのですが)では、そう熱心な


態度が見られませんが、子どもの話となると反応


が変わります。


なので、「今日授業参観に行ったら、」と話し出す


と、聞く姿勢になるのですが、その後「○○さんに


出会って、あんなこんな話をした」と続けると、オッ


トの顔から、わざわざ聞くんじゃなかった、と言い


たげな様子が読み取れます(が、決して言いませ


ん)。


ある意味、子煩悩とも取れないこともないのですが、


一方では、妻の話はそんなにつまらないのかー!


という夫婦の危機をもたらしかねない危険もはらん


でいると言えなくもないと思うのですが…。



おもしろいと思って下さった方、
↓ クリックお願いします。ランキングに参加しています。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ

blogram投票ボタン

誰そ彼れ心中/諸田玲子


「誰そ彼れ心中」は、時代ものでありながら、


ミステリーの要素もたっぷり盛り込んでいて、


そのうえ、狂おしいほどの恋愛も描かれてい


ました。


本のはなし ホンの少し


結婚4年目の旗本 向坂家の奥方 瑞枝はある


朝、庭先で3歳下の使用人の小十郎と初めて


言葉を交わします。


その内容は、殿である瑞枝の夫 宗太郎が別


人のように思えるというものでした。


小十郎には否定した瑞枝でしたが、自らも気


にかかるところがあり、兄の友人の同心 大島


と小十郎に調査を依頼します。



厳しい舅姑、出戻りの口やかましい義姉のいる


向坂家の生活は瑞枝にとっては決して心休ま


るものでありませんでしたが、そんな中で宗太


郎だけが彼女の心の拠り所でした。


しかし、今目の前にいる宗太郎は以前の宗太郎


と姿形は同じですが、醸し出す雰囲気、体臭に


瑞枝は違和感を抱き、拒絶するようになってい


きます。


大島の調査の結果、宗太郎が双子であり、他家


に預けた兄弟の右近なる人物が最近江戸に出


てきていることがわかります。



真実に近づくにつれて、関係する者たちが次々と


不自然な死を遂げていき、また、瑞枝は真実を知


ろうとしたため、向坂家での立場が悪くなって、次


第に追いつめられていきます。






ワタシの本の読み方は、家事の合間に少しずつとい


う感じで、まとめて長時間読むことはなく、今から何


分間、と決めて本を開き、あまり時間が無いときは立っ


たまま読んだりもします。


ホントはゆっくり読みたいのですが、その時間を捻出


するのが難しいので。


そんなふうに、時間を盗むようにして読んでいるワタシ


ですが、ときどき自分で決めた終了時刻がきても読む


のを止められない本に出会います。


本書がまさにそれでした。



ミステリーの部分も、心中に至る恋愛の部分も、江戸


時代を舞台にしなければ描けない内容で、3つの調和


がうまくとれていました。



その中で、心惹かれた言葉がこれです。



「逢いとうても逢えぬ。様子がわからぬ。さようなときは、


思いがつのる。あらぬ妄想に苦しめられもする。」



小十郎の思い詰めている様子が気になった大島が


小十郎を諭すように口にした言葉がこれなのですが、


200年以上経った現在も、これは変わらないですね。


恋する者の思いはいつの時代も同じなんですね。



終盤、追いつめられた瑞枝と小十郎が、心中に至る


までの場面の描写が秀逸で、文章からその情景が


浮かび上がってくるようで、目が離せませんでした。


映像にしたら、さぞかし美しいシーンになるだろうなと


思いました。



心中する男女というのは、なんとなく美男美女である


ことが暗黙の了解となっていますが、瑞枝と小十郎


も美男美女として描かれています。


そうじゃないと、絵になりませんからね。


絵にならないワタシには縁の無いことですが・・・。



ランキングに参加しています。クリックおねがいします m(_ _ )m


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
人気ブログランキングへ


blogram投票ボタン
blogramランキング参加中!



プロフィール

keishomom

Author:keishomom
お引っ越ししてまいりました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR